殺菌力が高い弱酸性次亜塩素酸水は、O-157食中毒事件をきっかけに普及
弱酸性次亜塩素酸水は、食品加工工場、福祉施設、ごみ処理施設など、業界を超えて、多くの企業、自治体などで導入されている。
「なぜこれだけの導入実績があるか。それは弱酸性次亜塩素酸水が必要とされているからです」と、吉田氏は、シンプルかつ核心を突くように理由を述べる。
弱酸性次亜塩素酸水は、農産物を加工する施設や工場などでも多く使用されている。そのきっかけはO-157食中毒事件だ。「食品を安全に、かつ目に見えない有害な菌やウイルスを不活化する殺菌料や消毒剤が求められたのです」と吉田氏は、当時を振り返りながら解説する。
食中毒の3大対策は、余計な菌を「付けない、増やさない、やっつける」ことだ。ウイルスや細菌は、主にたんぱく質で構成されているので、それらを不活性化し、残留性がなく安全性が高い殺菌料や消毒剤が求められたのだ。
そこで、菌やウイルス中のたんぱく質と反応すると、スピーディに分解し、水と無害無臭の有機物に変える弱酸性次亜塩素酸水が使われるようになった。
いちごやブロッコリーなど形が複雑で凹凸が多い食べ物の場合、迅速に有害な菌やウイルスを駆除するのは難しい。しかし、弱酸性次亜塩素酸水は、大半の微生物を1分以内に死滅させることがわかっている。さらに、食品に対しての殺菌効果も、他の殺菌料と同等以上の効果があることが確認されたのだ。その結果、短時間で有害な細菌やウイルスを駆除することができ、安全性が高い弱酸性次亜塩素酸水は、大量の農産物を扱う食品加工施設に欠かせない殺菌・消毒剤となった。
さらに、2020年6月、経済産業省とNITEは「35ppm以上の次亜塩素酸水は、新型コロナウイルスを99.99%以上不活化する」と有効性を評価した。弱酸性次亜塩素酸水は、すでに数々の細菌やウイルス不活化が確認されているだけに、今後さらにニーズが増える一方に違いない。
不快臭の元も分解する弱酸性次亜塩素酸水は、環境の衛生管理にも有益
弱酸性次亜塩素酸水は、有害な菌やウイルスを駆除するだけでなく、身の回りの不快臭の元となる成分も分解する働きもある。私たちの周りにある嫌な臭いは、たんぱく質などの成分が原因となる。弱酸性次亜塩素酸水に含まれる次亜塩素酸は、これらの成分と素早く反応して分解し、無害無臭の有機物と水に変化するあるため消臭対策にももってこいだ。
現在、弱酸性次亜塩素酸水は、牧場、養豚場などの悪臭対策にも多く使われている。畜産物の糞尿などをスピーディに消臭するだけでなく、動物たちの健康に悪影響を与える細菌やウイルスも退治できるため、牛、豚たちが健康に育ち、より質の高い畜産物が出荷できるになった。
また、弱酸性次亜塩素酸水は、農業の盛んな地域だけでなく、都会の衛生管理でも大活躍している。吉田氏は、ある大規模施設での導入事例を教えてくれた。
「東京・浜松町にある貿易センタービルの地下にあるごみ処理施設では、弱酸性次亜塩素酸水をスプリンクラーで散布しています。以前は、生ごみの臭いがひどかったのですが、現在は地下駐車場よりも臭いが気にならず、快適になりましたよ。さらに、菌やウイルスによる健康被害もなくなり、現在、このごみ処理施設は、小学生の社会見学コースになったんです」。
弱酸性次亜塩素酸水による消臭殺菌対策の結果、働く人々の健康管理にも有益なだけでなく、小学生の社会見学コースに選ばれるなど、社会貢献にもつながっているのだ。
“弱酸性”次亜塩素酸水は、水道の殺菌技術を応用した安全性が高い高機能消毒剤
弱酸性次亜塩素酸水などの次亜塩素酸水が一般にも流通するようになってから日が浅い。しかし、吉田氏は「弱酸性次亜塩素酸水の生成法は、水道の殺菌技術を応用したものです。この技術は昭和30年代から存在するものなんですよ」と語る。
私たちが普段利用している上水道の水は、次亜塩素酸を使って大腸菌などの有害な菌を駆除する。このとき水の割合を増やして希釈したときの残留塩素の割合を目安に、pHを調整するための希塩酸を加えているのだ。
電解希釈混合方式の弱酸性次亜塩素酸水は、アルカリイオン水に食品添加物である希塩酸と次亜塩素酸ナトリウムを混合して人体に影響のない次亜塩素酸水を生成する。「つまり、電解希釈混合方式の弱酸性次亜塩素酸水は、水道水の亜流のようなものなんです」。(吉田氏)
弱酸性次亜塩素酸水は、ナノレベルの殺菌成分が菌やウイルスを分解する
では、なぜ弱酸性次亜塩素酸水は、細菌やウイルスをスピーディに退治できるのだろうか。
吉田氏は「弱酸性次亜塩素酸水は、菌やウイルスにナノレベルで浸透し、反応すると次亜塩素酸ナトリウム分子という全く別のものになります。この分子は速やかに酸化還元されて水になる性質があり、酸化還元されるタイミングで一気に不活化されるのです」と説明する。
一般的に、菌の大きさは1から10マイクロメートル(1000分の1ミリ)であるのに対し、ウイルスの大きさは数十~数百ナノメートル(100万分の1ミリ)と、細菌の50分の1程度だ。
このため、マイクロレベルの大きさの殺菌成分は、菌やウイルスの中心まで侵入するの難しい。しかし、弱酸性次亜塩素酸水は、ナノレベルと大変小さい分子のため、菌やウイルスの表面を覆う殻から侵入し、菌やウイルスの中心まで入り込み、速やかに分解するのだ。
「アルコールも殺菌作用がありますが、アルコールの場合は成分で殻を溶かしてじわじわと侵入するというイメージです。そのためウイルスを不活化するまでには時間がかかります。一方、弱酸性次亜塩素酸水はナノレベルという小さな分子のため、速やかにウイルスの周りの殻をすり抜けて侵入し、ウイルスの中に入り込んで溶かします。そのため殺菌速度が大変早く、殺菌力も高いのです」(吉田氏)。
また、アルコール系消毒剤は、一部の菌やウイルスには十分な効果が期待できない。さらに、家具などの表面を拭き取って抗菌対策したとき、どれだけ除菌・ウイルス不活性化効果があるかデータがないのが現状だ。しかし、弱酸性次亜塩素酸水は、新型コロナウイルスだけでなく、さまざまな菌やウイルスを不活化する効果が確認されている。
ただし、弱酸性次亜塩素酸水を空間噴霧した場合など、一部の使用法については現在も有効性や安全性などを検証実験している段階だ。しかし、今後エビデンスが確立すれば、弱酸性次亜塩素酸水の用途がさらに広がるに違いない。
この記事はエコムーバーグローバルグループの監修によって制作しています | |
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エコムーバーグローバルJAPAN株式会社 代表取締役社長 吉田典弘(よしだのりひろ) | ![]() |
建設会社勤務、貿易会社代表取締役などを経て、2020年同社の代表取締役社長に就任。別会社では代表取締役として、貿易業、イベントコーディネート、国内外アーティストコーディネートなども精力的に行っている実業家。 |